第11話-3

「・・なんとか逃げおおせたみたいだな・・・」


衛星港・・ロビーまで戻ってきたオミと瀬奈

速攻で手続きを済ませ、さっさとクオリファイドのドックへと向かうのだが・・


「追っ手がかかってる・・!?」

「まぁ・・怖い怖い」

「くっ・・!」


ぱん、ぱんと乾いた音が数回・・

オミの放った銃弾は確かに敵をとらえる


・・やった!・・初めて当たった♪・・


しかし敵・・オミ達の前に立った男達はひるむどころか微動すらしない


「・・!?」

「小僧、その娘を渡せ」

「うそ・・ロボットぉ!?」


総数にして5、こういう連中にオミの持っている一般の拳銃ではまったく役に立たない

オミは瀬奈の前に立つようにしてかばう

銃口は敵をロックしたまま・・効かないとわかっていてもだ


「瀬奈ちゃん、僕が合図したら走って・・」

「・・・せっかく格好つけてる所悪いですけど・・それは必要ないようですわ」


ごごご・・と足下が揺れる

床を割り、人の大きさほどもある腕が飛び出してロボットを吹き飛ばした

「ゼンガー・・クオリファイド!こんな所に呼んだのか!?」

『緊急事態でしょう?大事の前の障子ですよ』

「・・・・君はねェ・・・(汗)」

「それを言うなら「小事」ですわ」


細かいツッコミはさておき、オミはこの機を逃さず走り出していた

例によって瀬奈を引き連れて・・急いでクオリファイドの艦内に駆け込む

後続はどうやらゼンガーが片付けてくれたらしく、クオリファイドのハッチは何事もなく閉じた。

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・・ブリッジに駆け込むと、オミは頼奈をサブシートに座らせ、自分はメインシートに着く

ブレードバッシャーとそっくりに作られながらも、あの船よりも広いブリッジ・・

オミは管制システムのスイッチを滑らせ、クオリファイドに叫ぶ


「デフコンレッド!・・多分外からも来るはずだから・・」

「了解してますよ。ディフェンス・コンディションレッド!・・さぁ、ゼンガー!」


クオリファイドがドックを離れた直後、エアロックを破ってゼンガーが飛び出してきた

・・と同時に、眼前に広がる闇の中からゆらぁ・・と三機の影が姿を現した

こんな幽霊のような現れ方をするのは、光学迷彩やらステルス機能の類だろう

三機はいずれもユニバースドライバー・・「三隻」と呼ぶべきか

中からもギアが次々と飛び出してきて、気がつけば周囲は取り囲まれてしまう


・・・総数にして37機!(UD含む)


「クオリファイド、突破するだけでいいから・・・何とかなる?」

「何とかなる?・・・フフフ(微笑)」


クオリファイド(の立体映像)と正面モニターに見えるゼンガーの動きがシンクロする


「この程度の戦力、ゼンガーとこのクオリファイド・ランサーの前では3分でスクラップですよ♪」


言うが早いか、ゼンガーの左腕はラリアットをするようにしてギアの一機を「ぶっ飛ばしていた」

胸部がひしゃげ、加速のついたギアは連鎖で後ろにいた機体を巻き込んで闇の彼方へ飛んでいく

そしてもう見えない・・・「きら~ん」とか効果音が聞こえてきそうだ。


『抵抗するな、娘を渡せば大人しく・・』

「今の見てなかったのかよ!?」


敵は全部ロボットなのだろう・・にしても、えらく反応遅い上にアレだ。

オミはツッコミを入れずにいられなかった


「・・バカめ・・と言っておやりなさい」

「イヤ瀬奈ちゃん、それは(汗)」


二人がボケツッコミをしている間にも展開は早いものだった

クオリファイドの指令に答え、ゼンガーは次々に敵を吹き飛ばし、切り裂き、撃ち抜いた

性能は確かにゼファーのそれを彷彿とさせる


「副砲&30ミリ一斉射撃!」


あわせてクオリファイド・ランサー本体から発射される弾丸の雨霰

相手が状況判断のできる人間ならともかく、IFR以下の知能しか持たないロボット兵達にどうこうできるものではなかった

・・敵は「舐めてかかっていた」のである


「全域掃討完了、そしてゼンガーも収容完了っと・・さてオミ様、ドコへ向かいましょうか?」

「・・一度アルさんに会っておいた方がいいような気がするし・・進路は太陽系へ!」

「了解、艦首右20・・進路確定、目標地球・ユニオンリバー社!」

「・・・・・・・」

「瀬奈ちゃん、ところでさっき「アルおじさま」って言ってたけど・・」

「それが何か?」


瀬奈はオミをにらみつけている

触れられたくない話題のようだが、どうやらオミは気がついていない


「アルさんの親戚だったりするのかな?・・なんとなくだけど」

「フン、あなたになど話す義理はございませんわ」

「・・・・・イヤ、知り合いなのかなぁと思っ・・」

「だから!あなたに話す義理など無いと言っているのです!!」


急に声を大にする瀬奈

オミはようやく気づいたらしく、そこで黙る

・・何か事情があるのかなぁ・・


(プ・・・・鈍~い方ですね、見た目どおり♪)

「?・・・何か言った?クオリファイド?」

「い~え?(笑)」


ニヤ・・と笑ってクオリファイドは消えた


・・しばらくの後・・オミはちら・・とサブシートを見る

瀬奈はうつむいたまま何も話そうとはしない

さっきがさっきのため・・オミは話しかける事ができなかった

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重い沈黙の空気の中、クオリファイドランサーは地球の衛星港に到着した

変わらず黙ったままの瀬奈を連れて、オミは地表へ降りる


セルムラント・・メインターミナル前

公然とした秘密基地(意味不明)のユニオンリバー事務所があった

中に入ると正面にいきなり、アルが待ちかまえていた

いきなりの出迎えにオミが驚く間もなく、瀬奈が駆け出していた


「おじさまぁ~♪」

「やぁ、大変だったね瀬奈ちゃん」


かがみこんで瀬奈の頭を撫でるアル

オミがずるっ・・とコケる


「ら・・瀬奈ちゃん??」


ぎっ!とオミをにらみつける瀬奈

・・かと思えばすぐにアルの方を向いてにこにこし始める


「・・・アルさん、俺はこれからどうすれば・・」

「瀬奈ちゃんの護衛を続けてくれ、この娘はこれからも狙われる可能性が高い・・他の連中が請け負わない以上は君にしか任せられないんだ」

「・・・え・・「他の人たちが請け負わない」?」

「ン・・あ、いや・・なんでもないんだ、なんでも・・・・」


・・また瀬奈がこっちをにらみつけていた


「おじさま・・私、(こんな頼りない)護衛など必要ありませんわ」

「そうはいかないよ瀬奈ちゃん、前みたいな事になったら大変だし・・」

「あんな事にはなりませんわ!・・お願いだから私を一人で・・」


事情が飲み込めないオミだけがぽつんと突っ立っていた

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・・結局、オミはクオリファイドランサーで宇宙にいた

アルが手配した星へ行く事になったためである

ブリッジのシートにはオミの姿だけ、瀬奈は用意された個室で寝ているらしい


「・・わっかんないなぁ・・」


オミがつぶいたのは当然ながら、瀬奈の事である

アル社長代理と知り合い?そんでもって何故か狙われている?

・・あんな女の子追っかけて、何の得があるってんだ?


「クオリファイド、君は知らない?」

「まだ知りません・・データベースがフルインストールされる前に起動しましたから」


クオリファイドはとりあえずモニターに自分の知っている情報を表示する


「見ての通りまだ会社関係者のデータすらままならない状態です。またシュウ様が戻ってきたら続きをしてもらう予定だったんですけど・・」


アイドルになって長いハズのシュウ=タキムラ・・しかし彼は時々ユニオンを訪れてメカニックとしての仕事を一通りこなしていくのだ

かくいうクオリファイド・ランサーの設計・開発もシュウの手によるものである

(つまりクオリファイドは正式にブレードバッシャーの兄弟艦という事になる)


「せめて狙われる理由だけでもわかれば問題はないのに・・」

「ま、仕事は仕事です・・・それならばあの方をお守りするだけでしょう」

「・・釈然としないなぁ・・・」

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衛星港に到着・・

太陽系を離れる事少しの宙域にある惑星「アイオネウス」

クオリファイドが入港する直前に見えたのは眼下の美しい地球型惑星だった


「・・結構良いトコ選んだんだな、アルさん」

「さてさてオミ様、瀬奈様を起こしてきてください」

「?・・君が起こしてきた方が・・」

「起こしてきてください」


・・というワケで個室の前まで来たオミ(弱っ)


「瀬奈ちゃ・・・」


ぱしゅっ・・とドアが開くのは同時だった

しょぼしょぼと目をこすりながら、ネグリジェに上着を羽織っただけの瀬奈が出てくる

オミは立ちつくした


「・・眠いですわぁ・・・なんですのぉ・・・・何か・・御用事?」

「ら・・瀬奈ちゃん!?服!!!」

「ふぇ?・・・・・・」


寝ぼけていた頭がようやく目を覚ましたのか、ぱち、と目を開く瀬奈

そして自分の姿を見て・・・


何故かオミの視界が、一瞬の衝撃と共に暗転した

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・・二時間後・・

惑星アイオネウス地表・市街地の一角にあるホテル・・

オミはその一室のベッドで目を覚ました


「あれ?・・・・僕は艦内にいたんじゃ・・・?」

「ようやく目を覚ましたみたいだね。」

「?・・ってわっ!?


目の前に恐竜の顔があった

・・いや、は虫類系のような・・・いや、恐竜というよりは神話に出てくるドラゴンのような?


「お、驚く事はないだろ?・・そりゃまあ確かにいつ見ても僕は珍妙かもしれないけど・・(ぶつぶつ)」


二足歩行で歩いている「ドラゴン」のような顔をした人間?・・顔だけでなく体格もかなりがっしりしている

オミはさっきの瀬奈のように、やっとはっきりした頭でその正体を思い出す


「ら、ラグナさん・・」

「・・・・そうだよ。」


アルの親友、「向こうの宇宙」の住人だった「竜人」という種族の異星人

服装は至って普通の人間と変わらない(ジャケットにジーパン)

・・こっちの宇宙にそういう存在が無かった分、彼はかなり珍しいのである

見た目が怖そうなのとはうってかわって、本人はかなり丁寧でわかりやすい性格をしている


「出迎えに行ったら艦内で倒れてて・・・僕がここまで運んできたんだよ」

「へぇ・・って・・・・僕はどうして倒れて?・・瀬奈ちゃんに「何かされて」・・?」

「当然ですわ、この「超弩級変態ロリコン覗き魔」さん?」


いつの間にか部屋に入ってきた瀬奈はむすっとした表情をしている

・・当然か、本人は寝ぼけていて「覗かれた」と一方的に思っているのだ


「瀬奈ちゃん、アレは起こしに行っただけで・・」

「まぁ・・「超弩級変態ロリコン覗き魔」さんは嘘が得意な事で。」

「・・・瀬奈ちゃん、許してあげた方がいいよ?」


ラグナも勘違いを弁解するのを手伝うが、瀬奈は鼻で笑った


「ラグナさん、そんな「超弩級変態ロリコン覗き魔」さんの肩を持つ必要はありませんわ。さっさと警察にでも裁判所でも地獄でも連れて行ってくださいまし。」

「・・・・・」


黙る二人。

・・瀬奈はこの後も言いたいだけ言って、さっさと出て行った


「・・苦労してるんだね、オミくん」


ラグナにぽん、と肩を叩かれて・・オミはがっくりとうなだれた


彼が行ってしまうとオミ一人。

・・狙われている彼女に護衛は「頼りない超弩級変態ロリコン覗き魔」の男一人(瀬奈からの一方的観測)

何故彼女は護衛をことごとく蹴るのか?

何故オミがこの仕事を任されたのか?


・・・まだまだ謎はたくさん残っていた。


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